院長日記

第15話 目の下のクマについて


目の下のクマを治して欲しいと来院された、スペイン人の女性の方の治療を先日行ったので、今回は、このきちんとした定義のない、非常に漠然と言われる、目の下のクマについて説明したいと思います。
皆さんの言われるクマなるものは、化粧や肌の手入れや、はたまた体の健康状態などとは関係のないもので、実は幾つかの病態に分ける事ができます。
目の下の皮膚は非常に薄く、汗や脂の分泌腺等皮膚の支持組織が極端に少なく、光の透過性の関係もあって、透けて褐色調に見え易い場所でもあり、そのため、血液の循環不全が表立って目立ち易くもあります。ほりの深い顔立ちの方で、皮膚の薄い方に多く見られます。また、結膜炎の影響を受け易かったり、アトピー性皮膚炎の好発部でもありますので、これによる皮膚の赤みや黒ずみ(炎症後の色素沈着等)もこのクマと言うものに当てはまりますし、ステロイド剤の副作用としての皮膚の萎縮(つまりは水分保持能力の低下)も含まれるでしょうね。また、目の下は加齢とともに膨らんで(所謂目袋と言われる状態)きますので、その境界部が逆に凹んで見える事で、光の具合で陰になって、それをクマと言う場合もあるでしょうし、更には、頬骨のあたりのシミをクマと言う方もいます。
治療法は、当然その病態によって異なります。色素自体の問題であれば、色素レーザーの照射を行う場合もありますし、凹凸の改善で目立たなくなるものであれば、凹ませたり、膨らませたりと言った治療を行います。ただ、萎縮した皮膚自体を元に戻す事は不可能ですし、皮膚自体に厚みを増す事も不可能です。
そのため、根本的な治療を行えるものとそうでないものもあります。
冒頭のスペイン人の方は、目の下の厚みが極端に薄く、頬骨が張り出している方でしたので、その境界部を目立たなくする目的と、皮膚の支持組織を増やす目的で、御自身の脂肪を移植する治療を行いました。結果は、御本人が喜んでいただけたのでよかったのですが、このクマと言われるものは、実際診察してみると、その原因は実に様々で、ここでうまく説明できたのか、自信は全然ありません。あしからず。