院長日記

第38話 顎の手術は流行らない?


顎の形を整えたい、日本人の場合は、顎を前方へ出したい、少し尖らせたい、シャープな印象にしたい等の要求がほとんどですが、じゃあどういうふうな治療を行うのかについて書いてみます。
以前は(コラーゲン製剤以外に注入剤がなかった頃)、顎の骨(下顎骨)の上に、DMPS (俗にいうシリコンですが)のインプラントを挿入する手術が唯一でした。
口の中(下唇を引っ張った時に見える粘膜)を2cmほど切開して、そこからインプラントを、顎の骨を覆っている骨膜をはがしてそれ相応のスペースをつくって、そこに挿入します。上手な医者がおこなえば、手術している事が全くわからないほど自然に仕上げる事が可能な手術ですが、ただ、その長期経過によって、インプラントが接触している骨の部分が少しずつ凹んできます。
これを骨吸収と呼びますが、この事によって問題が生じた例は、今まで1例も経験した事はないので、恐らく人の一生の期間ではあまり問題とはならないのかも知れません。
シリコンインプラントは他の部位にも使用しますが、例えば鼻やコメカミや額等では、あまり骨吸収がおこらない事が判っています。
まあこういう事があるのが原因なのか、新しい注入剤が登場してきた事もあるのか、顎へのシリコンインプラントを挿入する手術は、明らかに減っているようです。
当院でも、シリコンインプラントよりも、ヒアルロン酸注入を希望される方が圧倒的に多く、しかもかなり長期に渡ってその形態は持続します。
従来思っていたよりもずっと長く持続する(2~3年では全然元に戻らないようで)ので、現在のところ、顎や頬への注入目的で登場したSub-Q(ヒアルロン酸製剤の一種ですが)を使うまでもないように(費用も安くすみますし)思います。