院長日記

第50話 美容外科業界が壊れてる?


美容外科ってのが一体どんな業界なのか、さっぱり判らずも飛び込んで、気付くともう20年目に突入する事に自分自身驚いています。あまりに早く感じて、全く20年という実感がないんだけれど、実はこの業界、今ではかなり酷い状況にあるようです。
ある意味至極特殊、と言うかごく一部の医者しか知らなかった世界だったのが、あれよあれよと当たり前の業界になってしまって、プチ整形だのと囃し立てるのと同時に、猫も杓子も状態で新規参入が後を絶たず、もう完全に供給過剰に陥っています。
煽れるだけ煽って、出来もしない技術を大袈裟に喧伝する医者は今だ多く、まあその内酷いことになるだろうとは予測していましたが、案の定です。
ここで、先日、二重瞼の相談に来院された20代の女性の話をします。
今までに、二重瞼の埋没法(ナイロン糸を埋没させる方法)を他院で受けられていて、元に戻ったので、また別の医院で埋没法を受けられたのですが、また元に戻ったために、当院を受診されました。
ご本人は、このような経過が故に、切開法による手術を希望されました。私の診察では、埋没法でも十分だとの判断で、その理由等、また切開法も含めて、手術の説明を詳しくお伝えして帰院されました。
その1週間後に再度来院されたのですが、この1週間にかなりの美容外科を回られたとの事でした。ある所では、「あなたは眼瞼下垂なので、普通の二重瞼の手術では無理。」と言われて、これこれしかじかの手術を受けるようしつこく勧められ、またある所では「上まぶたの脂肪が多いので、これを取り除く手術をあわせて行うようしつこく勧められ、またある所では、私からはこう言う説明を受けているんだけれど(私の名前を出してもらってもいいですよ、とは普段からよく言っているので)と言うと、「西川先生は私が教えたんだよ。」と言われたそうです。そのドクター、見たことも聞いたこともない人ですが、まあどこも必死なんだろうなあ、と思います。
必死なのはいいんだけれど、嘘は駄目だし、もう医者という誇りすらないんだろうかと悲しくなります。
因みに彼女、眼科も受診していて、眼瞼下垂では全くない事を告げられています。
眼瞼下垂でもなければ、上まぶたの脂肪が全くもって多いわけでもありません。
ここ数年、このような嫌になるような話は山のようにあります。
あまりの供給過剰に、治療費のあまりに馬鹿げたディスカウントが横行し、逆に、無茶な治療費の吊り上げも横行しているようです。
こんな話は書きたくなかったのですが、今日の夕刊の一面に、これらのディスカウントの元凶の医院が、“訴訟を起こされて150万円で和解”との記事が出ていました。
別段、治療費が安かろうが構わないのですが(消費者にとって、安いのは魅力でもあるので)、それ以上に質の低下が著しいのは、もうどうしようもないですね。
業界がかなり壊れているように感じています。