院長日記

第56話 自己血液を利用した再生医療について


ご自身の血液から採取した血小板を利用した美容医療が一昨年あたりから行われだしています。
血小板に多くのグロースファクター(成長因子)が存在するのはかなり古くから判っていて、実は私もこれにはかなり関心があって、当時、欧州の研究機関と遣り取りした事があるのですが、信用し得る基礎データがあまりに乏しいのと、抱えていた幾つかの疑問点は解消されず、しばらく様子を見ていました。
それ以降、PRP (自己多血小板療法)、それに白血球を組み合わせたW-PRP療法などと称するものが喧伝されていますが、あまり本当の事情は伝えられていないようです。
目新しいものに飛びつく医者はいつもの如しで、患者満足度、安全性などよりも真新しさを優先させるが故に起こるこの業界の酷さはいつもの事ですが。
そういう事情で、当院でも、「ほとんど効果がなかった。どうしてでしょう。」との相談が多く寄せられています。
この療法においては、ただ多くのグロースファクターを注入すればよい、といった単純なものでは全くなくて、効果がないばかりか、下手をすると幾つか疑問視されている副作用も懸念されます。
恐らくは、各施設での効果のバラツキ(その理論や技術面においても)は相当だと思います。
上記の、抱えていた幾つかの疑問点が解消されたのもあって、当院でも、“細胞成長因子を添加した自己W-PRP(白血球含有多血小板血漿)注入療法”を始める事にしました。
自己の細胞を分離・培養した、幹細胞を利用する再生医療(これもまだまだ疑問点、判らない部分は多くあるのですが)も含めて、これらが今後美容医療の中心を担っていく事は間違いなさそうです。