院長日記

第58話 手掌多汗症手術の副作用に関するニュースから


先日、以下のようなニュースが配信されました。
<手掌多汗症>手術後、別の部位から異常発汗 病院提訴6件
4月17日配信 毎日新聞
手のひらに多量の汗をかく「手掌(しゅしょう)多汗症」の手術により別の部位から異常発汗し社会生活が困難になったとして、病院側を相手取り提訴するケースが相次いでいる。東京都や千葉、長野県でこれまでに少なくとも6件あり、9日には東京高裁が医師の説明不足を認定し病院側に賠償を命じた。手掌多汗症に詳しい医師は「深刻な副作用は少数だが、事前の十分な説明が必要」と指摘している。
この手術は「胸腔(きょうくう)鏡下胸部交感神経切除術」(ETS)。内視鏡と電気メスで脇の下の交感神経を切除する。手掌多汗症は治るが、別の部位の汗が増える「代償性発汗」と呼ばれる副作用が、程度の差はあるもののほとんどのケースで起きるという。
千葉県の女性(38)は24歳の時、ピアノの鍵盤が汗で滑るようになり99年7月、東京都品川区の病院で手術を受けた。費用は自己負担約3万円を含む約54万円で、手の汗は止まったが背中や太ももから滴るほど汗が出るようになった。スカートがぐっしょりとぬれ電車の座席にしみができるため、公共交通機関は利用できなくなった。夢だった海外留学や就職もあきらめ06年8月、病院側を相手取り慰謝料など約1億円の賠償を求め千葉地裁に提訴した。
同地裁は08年9月「代償性発汗を患者に説明したが不十分だった」と病院側の説明義務違反を認め110万円の支払いを命じた。2審・東京高裁も4月9日「代償性発汗は相当に重篤。(副作用を)可能な限り具体的に説明すべきだった」として1審を支持した。しかしいずれも「十分な説明を受けても女性が手術を受けた可能性は相当程度あった」と指摘し、一定額の賠償にとどめた。
女性は現在、親類の経営する会社の温度調整できる個室で事務の仕事をしている。「普通の社会生活が送れなくなった。異性関係に消極的になり結婚できるかどうか分からない。自殺も考えた」と話す。判決を不服として上告する考えだ。この病院は東京都などの患者3人からも提訴されている。
女性が開設したインターネットのホームページ「ETS被害者連絡会」には、25人から被害報告があったという。
5年ほど前、この疾患(手掌多汗症)について書いた事がありますが(第21話 手のひらの多汗症について)、当時、ETSを手掛けるクリニックが大阪にも何件かあり、その副作用(全く改善しない、と言うものから、代償性発汗まで)で困っている方を何例も診察していた経緯から、書いたものでした。
当時のこれらのクリニックは今は存在していないようですが、安易にこの治療法を喧伝する医者は今もいますし、逆に、多くの患者満足度を得ている施設があるのも事実です。
根治的な治療法としては、未だこのETS以外にはなく、治療成績は、その施術者の腕に依るところはかなり大きいと思います。
病院(クリニック)選びはくれぐれも慎重になさって下さい。