院長日記

第31話 豊胸手術の本当の話 その2


豊胸手術を半年前に受けられた40代の女性が先日来院されました。
豊胸手術用のバッグをただ挿入しているだけ、といった認識しかなく、そのバッグの種類や手術方法等はよく判らない、と言います。3ヶ月前に、そのクリニックはなくなっていて困っていたそうです。診察してみると、胸の形態は大きく変形していて岩のように硬く、うつ伏せでは眠れなかったと。
挿入されているバッグを早急に取り出す(傷は出来るだけ残さずに)必要のある旨を詳しく説明した上で、当日の治療を希望されました。摘出したバッグは、コヒーシブと呼ばれるシリコンの形状を固体化したもので、バッグの表面がザラザラのテクスチャータイプと呼ばれるもので、その形が左右対称のアナトミカルタイプと呼ばれるものでした。乳腺下に、腋下(わきの下)から挿入されていました。
この手術には問題点がたくさんあります。
まず根本的な事ですが、手術内容をよく理解せずに、させずに手術を行っている点です。お話にならない、と言えばそれまでですが、実はこのような例はいっぱいあります。あまりに安易に手術を受ける方が多いのと、あまりに安易に手術を勧める施設が多いのだと思います。
豊胸手術用のバッグについては、CMCやらハイドロジェルやら、よう解らんものを煽っていた美容外科医がいましたが、案の定それらのバッグは今やあまり見かけません。アナトミカルタイプと言って、胸の形状に近いから良い等と煽っていた者もいましたが、腋下(わきの下)からそのようなバッグを適切な位置に挿入して、しかも拘縮をおこさずになど神業としか言えません。
挙げればきりがないほど問題は多い、深いのですが、脂肪移植を上手に行う美容外科医は実際いますし、人工乳腺(所謂シリコンバッグですが)できれいに仕上げる医者もいます。
ヒアルロン酸の利用もまたしかり、です。
結局は、いい医者選び、になるのですが、上記の方のようにならないよう、もう少しは慎重であって欲しいと思います。