院長日記

第34話 脂肪移植による豊胸術について


バストサイズを大きくする方法として、内科的な手法では不可能であるので、何かを入れて大きくする以外にありません。
話題になっている、脂肪組織から取り出したES細胞を利用した乳房再建術は、まだまだこれからであるので、やはり今のところ、人工乳腺と呼ばれる豊胸用バッグを挿入する方法が唯一なんですが、最近ではヒアルロン酸の注入が試みられるようになってきて、いずれ他の素材も出現してくると思います。
かなり以前より行なわれている脂肪移植についてですが、当院で10年程前にこの脂肪移植を受けられた方が、先日来院されました。
右の胸に数㎝のしこりがあって、他院で診察を受けられた結果、何か異物を混入されたんではないか、と言われて心配されて来院されたのですが、脂肪移植後に起こりうるであろう、肉芽腫のようでした。
豊胸については、脂肪移植で安定的な結果を出すのは困難なので、積極的にすすめる事はないのと、大量注入を行なわないのと、乳腺下へ意識的に注入している事などから、このような経験は実は初めてだったのですが、この手の方法を盛んにやっておられる医師に聞くと、そんなのいっぱいあるよ、との事でした。
はなから脂肪移植を否定している医師(脂肪移植の経験自体ほとんどないと思われる医師が多いようですが)もいれば、非常によい治療だと盛んに煽る医師(上手に行なう医師もいれば、中にはバッグ挿入の手術が上手に行えない理由だけの者もいるようですが)もいて、消費者の方はかなり混乱しているようです。
それでも、お腹等の脂肪吸引と同時に脂肪移植を望まれる方が多いのは、一石二鳥のように思えるのと、豊胸用バッグなどの異物を挿入する事に抵抗がある方が多いからだと思いますが、脂肪移植がそう皆に上手くいく方法ではないと考えられていたほうがよいように思います。