豊胸術に使用する人工乳腺と称するものに、ハイドロジェルバッグというものがある事は以前書きましたが、高分子ポリマーに生理的食塩水を混ぜて水あめのような粘調度を持たせたもので、数種類の商品が出回っています。
これらの豊胸術用バッグの優位性はあまりないのですが、未だ存在するようです。
このハイドロジェルをそのまま(バッグとしてシリコン皮膜で覆うのではなく)注入剤として、胸や顔などに注入する商品もまた存在します。
上記の高分子ポリマーに、使用直前に生理的食塩水を混ぜて液状化させたものを、注射器で注入するものですが、その長期安全性が確立されているとは到底思えず、実際に、硬くなって困っている方を何人も診ましたが、この2~3年はもう診ることもなくなっていました。
ところが、昨日、ハイドロジェルと称するものを、2年前にとあるクリニックで胸に注入したところ、少しずつ硬くなってきて困っている、と40代の女性の方が来院されました。
診察してみると、かなり多量に注入しているようで、コブシ程度のシコリが幾箇所もありました。
水分量が一定に保たれなければ(実際は困難な事で)、このような事が生じる訳で、再度生理的食塩水を注入して液状化させた上で、取り除くしかないのですが、顔の狭い範囲であれば、以前かなりの症例を治療したので何とか希望に副えるのですが、これだけ広範囲に大量、となると、いささか自信がなく、その旨理解していただきました。
特に美容外科の分野では、様々な医療材が次から次へと登場しますが、本当に有益なものは(消費者の方にとって)意外と少なく、その使用にはかなり注意が必要なんですが、なかなか消費者の方には判断しづらく、新しい、というものについては、少なくとも、長くクリニックを維持している、とか、その責任者がはっきりしている、とかは最低限の判断基準にすべきかも知れませんね。