院長日記

第67話 他院で受けられた治療の失敗例あれこれ その1:脂肪吸引


日々の仕事内容の中で、他院で受けられた治療結果にとても落胆している、全く効果がなかった、と言われる方が、相変わらず相当の比率であるように感じています。
それ故、少しでもそういう例が少なくなる事を願って(正直、最初から診させていただければ、と思う事が多くて)、よく経験する症例を紹介していこうと思います。
脂肪吸引、二重瞼の手術、目の下のタルミを改善させる手術、ワキガの改善手術、豊胸手術、フェザーリフトと称する所謂、切らないでタルミを改善させる手術(金の糸などと称するものも含めて)、PRPなどと称する成長因子を利用した若返り治療、などなど多岐にわたりますが、まず最初に、脂肪吸引について書く事にします。
先日、脂肪吸引による死亡事故で、チェーン展開する某クリニックの某医師が逮捕されました。
こういうニュースがあるたびに、脂肪吸引手術の危険性についてのメール相談が増えるのは、開業以来全く同じ繰り返しなのですが、この施設、今までに一体どれほど死亡事故を起しているのでしょうか。 ある程度は把握しています(相当数で、よく破たんしないものだと感心します)が、事故を起こすクリニックというのはどうもいつも決まっているようです。
脂肪吸引手術は(あまり経験のない医師から見れば)一見簡単そうに思える手術なのですが、(これは相当経験を積んだ医師にしか中々判らないと思いますが)とても手間暇のかかる、腕の折れる手術です。
以前アメリカで、脂肪吸引を行える医師に発行する手形のようなものを乱発した事があって、その際、死亡事故が一気に増えて大問題になった事があります。
非常に経験の浅い医師を集めて、出来高で給料を支払うシステムのイケイケ施設で、事故が増えるのは至極当たり前だと思います。
上記の施設の院長が今回の逮捕劇を受けて喋っているのを見ましたが、手術は幾ら適切に行っても事故は免れないので、今後は腹部の脂肪吸引は行わない、との事。
ええ~! 適切?
“絶対安全”と言うのはあり得ないのですが、それ故、安全に行えるよう皆努力する訳だし、安全性が担保できなければそんな手術は決して行ってはならないし、現に、私の周りの親しい美容外科医で、死亡事故を起こした者は皆無です。
脂肪吸引手術は、元来、ダイエット(体重を減ずるために行う)ではありませんし、脚全体を細くするためのものでもありません。
部分的な厚みを取り除いて、そのラインをきれいに(スリムに)見せるために行うものです。
脂肪吸引については、その適応の見極めと、やはり経験数は絶対条件だと思います。