院長日記

第99話 “ハイフ”と呼ばれる機器について


数年前から、タイトルにある HIFU(高密度焦点式超音波)と呼ばれる医療機器が出回るようになりました。
顔のタルミの改善を目的とした超音波機器の一種ですが、この手の機器が出始めると、次から次へと類似の機器やエステ等で扱えるように出力を落とす等(当然その効果はほとんどなくなりますが)した機器が登場します。
その後の経過は大なり小なり同じで、医師以外のもの(看護師等ですが)が扱いを誤って事故を起こす、エステサロンで扱えないはずの医療機器を使用して事故を起こす、まるで効果のない機器で高額の費用をとって問題化する、大抵このパターンです。
先週も読売新聞に掲載されていた記事を以下の載せておきます。
参考になれば幸いです。
顔のシワやたるみなどをとるため、超音波を照射するHIFU(ハイフ)という機器を使った事故が相次いでいる。本来は医師が治療に使う医療機器だが、エステサロンの施術でも使われ、近年は「セルフハイフ」と称して機器を顧客自身に使わせる店も登場している。こうした使い方は違法の疑いもあり、消費者庁や国民生活センターなどが注意を呼びかけている。(石井恭平)
「照射する深さをピンポイントで設定し、特定の部位を狙い撃ちできるため、1回の治療で効果が出る」。東京都目黒区の「五本木クリニック」院長の桑満(くわみつ)おさむさん(61)はハイフの利点をそう語る。
クリニックには泌尿器科とともに美容外科もあり、ハイフを2台設置。全額自己負担の治療費は1回数十万円に上るが、美容に関心の高い女性だけでなく、取引先に好印象を与えたいとして、経営者の男性らも多く来院しているという。
ただ、過去に別の医療機関であごの神経を損傷する事故が起きたため、特定の神経への使用は控えているといい、桑満さんは「医療機関でも使い方を間違えれば事故が起きる。医学的な専門知識のない所での施術や利用は危険だ」と警鐘を鳴らす。
実際、消費者庁の「事故情報データバンク」には2015年1月から21年6月まで、ハイフによる事故報告が計77件寄せられている。
内訳は「顔面の一部にまひが残った」といった神経や感覚の障害が10件、「あごに赤茶色のシミのような痕ができた」というような皮膚障害が14件、やけどが33件など。美容外科などの医療機関でも17件の事故が起きていたが、エステ店での事故はその3倍超の53件に上った。「セルフハイフ」での事故も7件あった。
同庁によると、データバンクに報告されない被害もあるため、さらに多くの事故が起きている可能性もあるという。
医師法では、医師以外の者が医業を行うことを禁じている。国民生活センターは17年3月、ハイフは医師の判断や技術がなければ人体に危害を及ぼすおそれがあるとして、エステティシャンによる施術は医師法に抵触するおそれがあると指摘。施術のリスクを説明していない店があることも踏まえ、エステ店では施術を受けないよう呼びかけた。エステの関係団体を束ねる「日本エステティック振興協議会」も19年8月、会員に施術を禁じた。
それにもかかわらず、セルフハイフを含め、医療機関以外での施術は続いている。同協議会によると、個人が事業主となっているエステ店の中には業界団体に未加盟のところも多く、業界として指導することができない実情があるという。
医師法を所管する厚生労働省も昨年3月、都道府県などに向けて、「違法行為の情報を得た時は必要な指導を行い、悪質な場合は刑事告発を念頭に警察と連携して対応する」ことを求める文書を出した。しかし、どういう場合に違法と認定できるかは「施術を受けた体の状態なども含めて判断するため、即断は難しい」(医事課)という。
ハイフを巡っては、「脂肪をなくす」などとうたい、未承認の医療機器をエステ店に販売したとして、大阪市の会社代表らが15年に旧薬事法(医薬品医療機器法)違反容疑で逮捕される事件も起きている。代表を有罪とした大阪地裁判決によると、この会社は、機器の使用者にやけどなどの健康被害が生じ、大阪府から自粛を要請されたにもかかわらず、販売を続けていた。
こうした中、消費者庁の消費者安全調査委員会(消費者事故調)は昨年7月、ハイフの利用実態の調査を開始。これまでに照射実験やエステティシャンらへの聞き取りなどを実施した。事故調で審議を行う部会長の小川武史・青山学院大客員教授(63)は「事故やトラブルを防ぐため、行政に対し、規制のあり方への意見を出すことも視野に入れて、しっかり調べていく」と話している。