院長日記

第12話 女性化乳房について


男性が、女性のような乳房の発育(乳房組織の隆起)を見る場合、これを女性化乳房(Gynecomastia)と呼びます。両側の方もいれば片側の場合もあり、また、その隆起もまちまちです。思春期までのものは、自然に改善するものがほとんどですが、青年期以降に見られるものには実に様々な原因が考えられます。例えば、腫瘍の一部のものや、慢性肝障害、薬剤(H2ブロッカ-と言う胃潰瘍の薬、ホルモン製剤、ジキタリス等)、マリファナの吸引、内分泌器官の障害等が挙げられます。
治療は、当然その原因に添ったものになりますが、原因が突き止められないものが多く存在します。その場合には、手術適応となるのでしょうが、当院を受診される方は、ほとんどがこの段階で受診されているようです。最近、同じような受診者の方が続いたので、今回はこのような話しをする事にしました。
他院(主に内科や胸部外科を受診しているようですが)で検査を受けられて、原因がよく判らない場合、手術の話しになるのでしょうが、この際、傷跡が大きく残る(脇腹のあたりに)、乳輪が陥没したようになる、2~3日の入院が必要である等の説明を受けられて、さてどうしたものかと悩まれて、当院を受診される方が多いようです。
一般診療において、傷跡をきれいに云々の発想は元来なく、制度上仕方がないとも言えるのですが。
手術は、発達した乳腺を取り除く事になります。乳腺は吸引できるようなしろものではないので、どこかにメスを入れる必要があります。これが手術による傷跡ですが、これは可能なかぎり小さく目立たないのがよいに決まっているので、乳輪の下半分の円周(4cm前後でしょうか)を利用して、ここから乳腺組織を摘除する事になります。術後の仕上がりを当然のように期待されているので、手術自体は少し骨のおれるものにはなるのですが。
麻酔は局所麻酔で充分おこなえますし、入院の必要はありません。