院長日記

第26話 胎盤(プラセンタ)について


先日、胎盤製剤を製造しているとある医薬品メーカーが、ヒトの胎盤を使用した無承認、無許可の医薬品を製造、販売していたとして、薬事法違反容疑で強制捜査を受けました。かねてより、このある意味摩訶不思議な胎盤(プラセンタ)について、ここで書こうと思っていたので、これを機に私の知り得る胎盤なるものについて話してみます。
胎盤の特殊な生理活性を利用した方法は、かなり歴史が旧く、中国では明の時代の薬物書に登場する紫河車(しかしゃ)は現在でも重宝されていますし、日本でも不老長寿薬として、昆元丹(こんげんたん)が存在していました。旧ソ連では、フィラトフ博士が冷凍胎盤を皮下に埋め込む組織療法をおこなっていました。この療法を真似した施設が日本にもあり、一時は観光バスで老人達が押し寄せる、と言った事もあったようです。
私がプラセンタに興味を持った経緯については、かなり話しが長引くので省略しますが、現在医薬品としては、肝機能障害の治療薬、更年期障害の治療薬の2種が存在します。美容外科医や皮膚科医が美白、若返り等と言って宣伝しているものは、この注射薬の事です。冷凍胎盤の皮下への埋没療法と称するものは、上記の薬事法違反容疑の件で、材料の入手がかなり困難でしょうね。他にヒト胎盤の入手経路は幾つか存在はしますが。ただ、ヒトの胎盤を使用するとなると、これも一種の臓器移植にほかならず、法的問題はついてまわるのではないでしょうか。
漢方薬として、また、化粧品として我が国で出回っているものについては、ヒト胎盤は姿を消して、ブタの胎盤が使用されています(効能は同じと言うものの、何の根拠もありません)。
以上、胎盤については少し否定的な内容になりましたが、ヒト胎盤については、解明されている事柄はほんの少しですが、その効能は図り知れず(そのグロースファクターの可能性)、上記の注射薬の経絡への注入はたしかに有効ではありますし、埋没療法もその材料の入手に後ろめたさがないものであれば、ぜひ私も使ってみたいとは思っています。