院長日記

第86話 肝斑にレーザートーニング?


シミに関するご相談の方は、開業以来20年間あまり変わらず来院頂くのですが、最近よく経験する事(少し気になる事)をお話しします。
俗に言うシミ(我々は境界型のシミと呼んでいますが)の場合、これはメラノサイト(皮膚の基底層に存在します)の器質的な変化(老化も含みます)ですので、その治療方法は唯一、Q発振の色素レーザー(かれこれ20数年前に開発されたレーザー機器で非常に有用な治療機械です)を照射する事できれいに消す事ができます。
幾つかの鑑別さえ誤らなければ、また、治療後の経過を詳しく理解して頂ければ、非常に満足の行く結果を得る事が出来ます。
この境界型のシミに対して、肝斑と呼ばれるシミの治療が最近どうも変な事になっているような気がしています。
数年前から、「レーザートーニングは行っていますか?」といった質問を多く頂くようになりましたが、このレーザートーニングとは、上記のQ発振のヤグレーザーの出力を低くしただけのもので、レーザートーニングなる治療機器や治療方法があるのではなくて、単なるネーミング(誰がつけたかは知りませんが商売上の)でしかありません。
少し厄介な事に、この治療が肝斑に有効だと言った学会発表が幾つか出ていますのと、業者も美容皮膚科医などを相当煽って売りつけているような側面もあるようです。
この治療が有効だと言うのにはどうもカラクリがあって、ただ単に同時に服用させている内服薬や外用剤が効果的なだけの場合や、元来が夏場に悪化して冬場に改善する性質のシミですので、ただ単に季節的な要因で改善したように思うだけの場合、レーザー照射による単なる脱色素班が生じているだけの場合や、色素沈着が生じる前に何度もレーザー照射を受けさせている場合など、どうもすべてが眉唾もののように思います。
レーザートーニングと言う治療、今現在ではまだ受けて頂くような代物ではないと思っています。
肝斑は明確な原因が判っておらず、唯一効果が(医学的根拠として)認められているのは、今だ脱色素剤の塗布のみです。