院長日記

第6話 睫毛(まつげ)の植毛について


女性にとって、睫毛は目元をきれいに見せるための重要なパーツのようで、睫毛への化粧、パーマ、付け睫毛等の利用頻度は非常に高く、それが過剰になると睫毛の再生中枢へのダメージとなって、逆に本来の睫毛が薄くなった、生えなくなった等の相談が急増しています。
人の毛には、硬毛と毳毛(うぶ毛)がありますが、前者の硬毛は、頭髪や腋毛等の長毛と、眉毛、睫毛、鼻毛等の短毛に分けられます。長毛である頭髪は、1日に0.2~0.4mm、1ヶ月で約1cmほど伸びますが、短毛である睫毛は、長毛の数分の1から数十分の1の太さで、毛の寿命は1cmたらずです。
そこで、睫毛への植毛手術は可能か、と言う事になりますが、可能ではあるが、本来の睫毛よりも太くなる事(長毛である頭髪を移植するので)、伸びるのが早い事、植毛密度に限度がある事(片側でせいぜい30~40本程度でしょうね)、上方向へのカーブをつけるのが困難な事、を充分踏まえた上で手術適応を決める事になります。
傷跡等による脱毛であれば、この植毛手術の意義は非常に大きいのですが、cosmeticな見地からは、ものの見事に仕上げる事は困難(上記の理由と、その方の髪質にもよるので)なので、本音としては少し気の重い治療法ではあります。
そのため、例えば、「舞台化粧としての付け睫毛の影響で、睫毛がほとんど脱落してしまった(仕事上致し方ないのでしょうが)ので、植毛手術によって付け睫毛をしなくてもよい状態にはできないでしょうか」と来院される方には、舞台で使用している付け睫毛を見せていただいた上で、これにかわるような結果を植毛手術では得られない旨をお伝えする事になります。
ただ、このような点を踏まえても尚、1本でも多く太い睫毛を望まれる方は案外多く、また、術後の睫毛の手入れ(長さの調節やパーマなど)も私の思うほどには案外と苦にはなっていないようですね。