1998年に東京大学で美容外科が開設されたのがきっかけかどうか、この手の情報が喧伝されています。現在、美容外科を開設している大学病院は十数ケ所あるようです。「大学病院なら安心」、と言った消費者心理からか、需要はそこそこあるようです(高齢者を中心に)。
元来、美容外科を侮蔑してきた際たる連中が、大学教授をはじめとした大学や市中の大病院ではなかったのでしょうか。大学の独立法人化の問題があるにせよ、形成外科では食っていけないとの本音もあるにせよ、また、時代のニーズなのかも知れませんが、やはりなんやら奇異に感じずにはおれません。
形成外科が標榜科目となる際に、美容外科は含まずとの条件だったはずで、この点については、なし崩しと言うか曖昧なままだし、美容外科学会は相変わらず二つ存在しているし、もっと根源的な大学病院の内在する問題点、つまり、一体研究機関なのか、教育機関なのか、医療機関なのか(総べて一緒に上手くいく筈はなく)、との問題を何ら解決できずにいます。
先日読んだ記事で気になった事が二つ。
1:大学病院が美容外科を始める事によって、今まで開業医の経験則頼りだった治療法が、科学的に、また、理論的に検証されるだろう。
2:大きな手術は大学病院で、小さな手術は開業医で、との住み分けができるだろう。
前者については、医療と言うものは、元々自然科学なんかじゃないし、医者が行ってきた事の経験則をいかにも根拠付けしてきただけのもので、ある意味人文科学のようなものだと思うんだけどなあ。
後者については、わざわざ大学病院で行う必要のある美容分野の治療ってなんだろう。特にないと思うのですが。
美容外科が標榜科目に至ったのも、美容外科のマーケットを作ってきたのも、在野の開業医による事は紛れもない事実で、はたして未だ白い巨塔である大学病院で、美容外科がうまくいくとは到底思えないのですが。