院長日記

第47話 医療用注入物の危険性について


鼻を高くする目的でスーパーヒアルロン酸(それって何?)を注入した後、注入した部分が赤く硬くなっていて大変困っている、と20代の女性の方が先週来院されました。 注入したのは3年以上前で、赤くなり始めたのは3ヶ月前からとの事。 診察してみると、鼻根部から鼻先にかけて皮下に硬い腫瘤が触れて、鼻の皮膚は毛細血管が拡張して全体に発赤が見られました。
このスーパーヒアルロン酸(このような名称の製品はなくて、このクリニックが勝手にそう名付けているものですが)とやらの正体は、ダーマライブという製品でした。
ダーマライブ(Dermalive)とは、ヒアルロン酸にHEMA(ハイドロキシメチルメタクリレート)と呼ばれる粒子を混ぜた医療用注入材ですが、かねてよりその危険性は指摘されています。危険性とは、異物反応(注入後すぐに赤く腫れ上がってくる等)と、異物性肉芽腫と呼ばれる岩のように硬い肉芽組織が出来る事です。
上記の受診者の方の腫瘤は、まさにこの異物性肉芽腫でした。
簡単に治療できる(元通りにして差し上げれる)ものであればよいのですが、鼻の皮下浅くに皮膚に張り付くように出来ていて、しかも鼻全体にわたっていて、かなり慎重な対応が求められました。
美容外科(美容医療)が日本だけでなく世界中でブームとなっている現在、これら注入材による所謂プチ整形なるものが流行していますが、注入材料の使用は、それを扱う医師個人の責任においてのみ行われているのが現状です。
長く、広く使用されている一部のコラーゲン製剤やヒアルロン酸製剤はともかく、生体内で分解されない成分を混ぜたものを、長期にわたって持続すると煽っているような代物には、かなり慎重であって欲しいと思います。
スーパーコラーゲン、スーパーヒアルロン酸、CEマーク取得だから安全(人体への安全性とは全く異なる意味での、単なる製品としてだけの規格に対してのものでしかありません。)などと謳っているような医師は、当然避けたほうが無難です。
ヒアルロン酸の注入材が登場して以降、多くの非分解性の混入注入材が販売されてきましたが、数年、十数年経過して、被害が多く出てきそうな予感がします。