院長日記

第51話 美容外科業界が壊れてる? その2


前回、美容業界の酷い状況について少し書いたのですが(出来ればこのような事には触れたくはないのですが)、先日、以下のようなNEWSが配信されました。
<美容医療>クレジット被害相次ぐ 弁護士ら電話相談実施へ
毎日新聞
脱毛や豊胸手術などで、医療機関に不当なクレジット契約を結ばされたとするトラブルが相次いでいる。割賦販売法は、商品やサービスに欠陥があった場合に、信販会社への顧客の代金不払いを認めているが、医療行為は対象外なのが背景にあるようだ。弁護士らは25日に初の専用電話「高額美容医療被害110番」を実施する。
「11万円との広告で包茎手術を頼んだが、手術時に『170万~180万円かかる』と言われ、既にクレジット契約書が用意されていた」「8万5000円との宣伝を見て診療所で二重まぶたの手術を相談すると、2時間説得され270万円で契約、術後、まぶたが腫れた」--。
第二東京弁護士会の消費者相談には、こうした医療ローンの相談電話が月1~2本かかる。同様の電話が医療相談の窓口にも寄せられるという。国民生活センターによると、美容医療に関する苦情・相談は06年度に1253件で、3年間で1.4倍に増加。契約・解約絡みは、全体の8割近くを占めた。
割賦販売法は、信販会社への代金不払いを認める美容関係サービスについて「皮膚を美化し、体型を整え、体重を減らす施術」とする。しかし、「医師による美容医療は該当しない」というのが経済産業省の見解だ。
政府は対象指定を撤廃する改正法案を今国会に提出しているが、同弁護士会の五十嵐潤クレラサ部会長は「改正前に、業者が駆け込みで契約を取ろうとしている」と注意を呼びかける。
包茎専門クリニックでは、もうかなり以前からこの手の問題は存在していましたが、前回書いた美容医療業界のあまりの供給過剰状態によるものなのか、美容外科でも同様の悪質な商売が増えているようです。
まあそんなところは直ぐに淘汰されるだろう、と思われるかもしれませんが、実情はそう簡単ではありません。
いつも書いているのですが、美容医療って社会的制約をほとんど受けなくて、しかも全て自費診療であるので、医者の責任範囲で何でもOKってところがあるのですが、この“医者の責任”の部分、実はかなり守られています(上記の記事にあるクレジット契約の対象指定外もそのひとつですが)。
元来皆保険制度の中で定められた法律で、現在の自費診療中心の美容医療を規制するには全く無理があって、もう医療とは全く無縁の利益だけの追求に走る連中が、逆にこの医療にまつわる法律に守られているのが実情です。
前回に続いて、もう一例紹介しておきます。
昨日来院された20代の女性。
二重まぶたの手術を受けようとあるクリニックを受診したところ、眼瞼下垂の手術が必要で、治療費がさらに100万円必要で、しつこく当日の手術をすすめられたとの事。そこで、今度は他のクリニック(眼瞼下垂は保険適応と電話説明を受けたので)を受診すると、電話の説明とはまったく異なって、100万円と言われたその手術を半額の50万円でしてあげる、と言われ、手術を受けないと帰してもらえない雰囲気で、かなり怖かったですと。
実際に診察してみると、一般的な二重まぶたの手術(所謂埋没法)で十分ご本人の満足度が得られる方でした。
最近、この眼瞼下垂をからめた手術費用の上乗せを無理やり行おうとする話を毎日のように耳にします。
因みに、眼瞼下垂症については、それが原因で視力低下が起こっている例に関しては、保険適応となっています。つまり、美容外科手術としての眼瞼下垂症の手術は保険の適応にはなりません。
悪質な者に引っかかるのは、多分に消費者の方にも原因がある場合が多いのも事実だと思います。 くれぐれも病院選びは慎重になさって下さい。