院長日記

第74話 額に注入されたジェル物質によるトラブル


数年前からの韓流ブームもあってか、韓国へ美容治療に出向かれて(中には買い物ついでに、という方もおられるようで)、その術後のトラブルで来院される方が跡を絶ちません。
「一体全体、どんな治療を受けられたの?」、「こんな手術をしたら、そりゃ~駄目だわ!」等々、驚くような事がよくあります。
韓国では美容整形が当たり前のように言われているのですが、私がまだ美容外科医に転身した頃(24,5年前)には、まだ韓国には美容外科医などいなかったですし、美容外科手術を行っている施設も無かった筈ですが。
「20年ほど前に韓国で、額をふっくらさせる目的で“何か”を注入されて、数年前から額がボコボコとなってきて、赤みが出現してきたので何とかして欲しい。不安で不安で仕方ない。」と先日来院された方の話を紹介します。
診察するに、額全体に硬結(岩のように硬い)がみられ、ところどころに発赤(皮膚が赤みを帯びている)がありました。
日本でも30数年前に問題となった肉質注射(第33話参照)なのかどうかよくは判りませんが、どうしたものか、なかなかうまい治療法が思いつかず、でも何とかしてやれんものかと悩みましたが、突き放す訳にもいかず、昨日治療を行いました。
額の毛の生え際を切開し、額の筋肉の裏側から何とか取り除けないものかと思っていましたが、見ると、その筋肉(前頭筋)はなく、全て変性していて、筋肉があったであろう層と皮膚の間には石灰沈着が見られました。
さあ、どうやってこれらを取り除こうか思案のしどころで、でも何とか皮膚へのダメージなしに、相当量取り除く事が出来ました。
本日経過を診せに来院頂いて、腫れもなく、皮膚の色調もよく、取りあえず一安心でした。
(正直なところ、それほど勝算があった訳ではなく、気の重い手術でしたが)。
日本で受けられた注入物であれば大丈夫、では決してありませんが(怪しい代物を使う医者もまだまだ居るようで)、海外での治療は更に更に慎重であって下さい(韓国の美容外科が駄目、と言っている訳では決してありません)。