院長日記

第7話 レーザーで肌の若返り?


医療分野へのレーザー機器の応用は1960年代に始まっていますが、1990年代に入ってこの光学医療機器は大きな進歩を遂げ、色素への選択性が極めて高いQ発振のレーザー機器が登場した事で、主にアザの治療は飛躍的に向上したと言えます。
太田母班等の青アザは、傷跡を残す事なくきれいに消せる様になり、一部の機器では健康保険の適応を受けるようになってきています。また、シミの治療も、これを契機にかなり前進(シミに真面目に取り組む医者が増えたので)したと言えます。
まあこのあたりまではよいのですが、問題は、この後、シワの改善をはかるとか、毛穴の開きに有効であるとか、肌自体が若返ると言った目的でのレーザー機器が毎年のように登場してくるに従い、どうも、レーザー機器に対するいかがわしさや胡散臭さを感じるのは私だけでしょうか。
皆さんが、肌がきれいになった、と言われるのは、多分に主観的なものではありますが、他院でレーザー治療を受けてみたが何の効果もなかったと言って来院される方が急増してきたので、今回はこのような話しをしてみます。
肌の若返りを目的とするレーザー機器(IPLと呼ばれるフォトフェイシャルの類いのものは、レーザーとは異なるのですが、これらも含めて)は、それ自体の能力にもよるのでしょうが、レーザー機器メーカーのうたい文句そのままのような宣伝広告によって、消費者の方の期待値と、実際の治療結果とのギャップがあまりに大きいことが原因であるように思えます。
これはもう、ひとえに医者のモラルなんでしょうが。
レーザーや光の照射によって、真皮層のコラーゲンの産生が促され、その結果肌がよくなると言いますが、確かにコラーゲンの増生はみられるのですが、単なる皮膚の修復過程によるものでしょうし、その増生したコラーゲンによって、一体どの程度肌がきれいにみえるのか、また、一過性のものではないのか、慢性的なレーザー照射による皮膚への逆効果はないのだろうか等の疑問がついてまわります。数年で下火になってきたケミカルピールとどこか似ている様な気がしないでもありません。
ただ、機械であっても医者の使い方次第と言う面は多いにありますし、この手の機械も着実に進歩してくるでしょうから、私も多いに期待はしているのですが。